DMはじめの一歩3.5e
第1歩目 そなえよつねに3.5
050401
文責:石川
DMとは大変な仕事である。
プレイヤーの数倍の投資と、数十倍の準備期間、そして数百倍の努力と工夫を持って数人のプレイヤーの行動を管理し、プレイングを維持していかなければならないのだから。
しかし、実際やってみるまで、DMには一体何が必要で、どんな準備をしたらよいかはわからないものだ。
いざプレイ、という段になって初めて、何は必要なのかがわかったりしてしまう。
そこで、DMはじめの一歩 第1歩目では、DMがプレイを維持するためにはなにを準備すると良いかについて考えてみよう。
DMとは大変な仕事である。
プレイヤー達の無理難題を処理するために(そう!彼らが何とはなしに思いついた愚にもつかぬ行動を判定するために!)、適切なルールを示し、時にはプレイヤーに代わってダイスを振り、あるいはなんらかのリアクションを返さなければならない。
しち面倒臭いことに、D&Dというゲームはこうした愚にもつかないこと(戦闘中に相手を突き飛ばしたいとか、相手のペンダントをむしり取りたいだとか、木に登りながら遠眼鏡で300ft先の女風呂を覗くだとか)をも処理可能なルールがワンサと掲載されている。アニメ絵のおねえちゃんだけでカラーページを埋め尽くしたり、小説家崩れが15秒ほどで考えた世界設定をだらだらと垂れ流すかわりにルール部分はA4で2ページほどでまとめられてしまうようなゲームの氾濫する現代に、D&Dは3冊のコアルールブック(ああ、人が殺せるくらいの厚みは十分あるとも!)のほとんどを使ってプレイしているのだ。その厚みは3.5eに進化した現在さらに分厚いものとなり、ついでに値段も増量を達成したりしてしまったわけだが、この活字離れが叫ばれて久しいご時世に真っ向から立ち向かうWotCのデザイナー達の心意気には賞賛の拍手を惜しむものではない。
一方で「ルール多すぎんだよこんなくだらねえ事までルール化してんじゃねえよメリケン人がこんなの能力値チェックで片しちまやいいだろこんなだからウィンドウズは一向に使いやすくなんねんだよビルゲイ(以下略)」などと思わず悪態をついてしまう場面も少なくない。ルールがあまりにも膨大すぎて、どこに何を書いてあるかを把握するのがあまりにも大変すぎるからである。
やっかいなのは、DMという役割の性質上、PL達よりも広く、かつ的確にルールを適用しなければならない、という点だ。
前述のようにD&Dというゲームはいらんルールが山のように示されているゲームであり、そのすべてを完璧に把握するのは少々やっかいな仕事であると言わざるを得ない。そんなルールの大海に一人こぎ出さねばならない(しかもそこにはPCという名の海賊が生贄の羊を求めてうろうろしているのだ)DMは、いかにしてこの不条理なる荒波を乗り越えればよいのだろうか。
「はじめの一歩」第1歩目でも述べたように、DMやプレイヤーはルールすべてを暗記しておく必要はない。そりゃ憶えておくに越したことはないが、実際のプレイ中には「XXのページの修正がつくよ」とか「OOに書いてあるルールに従ってプレイするよ」などと伝える場面も多く、またルール解釈でモメた場合などは根拠としてルールを示さなきゃいけない場合もある。君がルールだけでなくそのルールが書いてあるページや、付随する表をすべて憶えられる超記憶力の持ち主であるなら話は別だが、たいていのDMはそうした能力を持ち合わせてはいない(少なくとも石川には備わっていない)事を考えると、すべてを憶えようとする努力を放棄して『頻繁に使う部分だけ憶える』『どんな場合にどこを開けばよいかを憶えると同時に、ルールの検索性を高める』ということに努力を差し向けた方が有益であろう。
そう、君にとっての最大の武器となるのはPHBとDMGであるのは言うまでもない。この2冊の聖典こそが、君のマスタリングという名の航海を導く海図であり、六分儀である。無論、持ってるだけでは意味がない。この二つを使いこなして初めて安全な航海が可能になるのだ。
そこで、君のPHB並びにDMGの次の箇所に、以下のようなタグ付けを行ってほしい(なお、PHBの方は「はじめの一歩」で示したものと同内容である)。ちなみにDMGの方は少々貼る箇所が多いので、タグを詰め気味に貼る、ないし小さいタグを使うとか、大き目のタグを半分にカットして使うなど多少の工夫が必要かも知れない。あと、最近は透明〜半透明のタグや付箋もあり、書き込みに非常に便利っぺえので文房具店に行く機会があったら気をつけてみよう。
<PHB>
p9 能力値・修正
p22 レベル・ボーナス
p63 技能
p87 特技
p114 武器
★
p121 防具
★
p125 アイテム・サービス★
p135 機会攻撃
p137 アクション
p145 戦闘移動
p149 戦闘修正
p152 特殊攻撃
p161 移動・運搬
p167 魔法
p302 用語集
※ちなみに★印がしてあるものは、筆者がページ上側にタックを貼り付けて
いるものである(表(だけ)を頻繁に見るので分けてある)。
<DMG>
p20 移動
p21 遭遇
p29 サイズ関連
p37 経験値計算
p53 宝物表
p59 壁 (p60 扉)
p67 罠
p74 罠表
p85 野外
p103 腹心・雇い人
p108 NPC表
p126 NPC装備・特徴表
p135 共同体
p147 次元界
p165 PC作成
p211 魔法のアイテム
p213 防具
p219 武器
p226 ポーション
p227 指輪
p231 ロッド
p235 巻物
p239 スタッフ
p243 ワンド・その他
p289 用語集
p317 索引
なお、一覧中太字で示したところは頻繁にみることになる場所なので、他のものより目立つタグを付けておくか、貼る位置を変えた方が便利なページである。参考まで。
さて、この操作によってPHBとDMGが数倍ないし数十倍使いやすくなったわけだが、それでもなおその使い勝手に困難さを憶えるDMも在ることだろう。慣れてくればこの程度のタグ付けでもそれなりにプレイできるようになるのだが、たとえ慣れたとしてもいちいち判定のたびにあっちこっちのページを繰るのが面倒だという向きもあるかも知れない。
そこで石川はオリジナルルールサマリーを作成した。
このスクリーンはさぼりっこ氏が送ってくれた3eルールサマリーを元に3.5e向けの変更を加え、ついでにMage Advicesでからくり氏がまとめてくれた不可視&非実体なクリーチャーの発見表とか反射クソレヌ屋氏の作ってくれた表とかとにかくいろんなものをタコ詰めにしたものである。
ダウンロードして使いやがれ!
<ダウンロード>
ルールサマリー
※全5ページ
ダウンロードしてそのままルールサマリーとして使うもよし、適当な厚さの紙に貼り付けてマスタースクリーンとして使うもよし。
まあ使っとけ!
さて、ルールは何とか調べられそうだ。じゃあさっそくプレイに移ろう。
いやまて。
供えあれば憂いなし。
というわけで投稿された便利グッズを紹介しておこう。
経験値&お宝ジェネレータ
サマリーに入りきらなかった経験値計算表とランダムトレジャー表のセット。osyo氏作。
経験値&レベルアップ表
経験値とレベルアップにおけるボーナス諸表。
上の表とちょっとかぶってるけど、まあ気にすんなって!
HAL氏作。
武器・防具・アイテム表(複合版)
和訳された各種サプリに掲載されている武器・防具・アイテムがひとまとめに!
やばい便利。HAL氏作。
拾得アイテム記録用紙
PCたちが拾ったアイテムとそれまでにわかってる情報を書き込んでおく為の用紙。
長いキャンペーンでありがちな「ここで拾ったアイテム売りたいんだけど」なんて時にもさっと対応できる!地味に便利。HAL氏作。
ラウンド/時間進行記録用紙
こちらは戦闘中や野外移動中に使った呪文や時間進行を書き込んでゆくための用紙。
横罫の幅の違うのが3種類収められているので使いやすいサイズのを使え!
ちなみにザコは細いの、PCは太いのとかでよいと思う。HAL氏作。
ランダムエンカウント一括ロール表
通常1時間毎にロールすることになっているランダムエンカウンタロールをまとめて行うことを可能にする確率分布表。しかも「その時間中に何回エンカウンタがあったか」まで同時に決定できる(さぼりっこ氏作)。
ちなみにエンカウント表の例はこちらからどうぞ(注:3e用)。
さて、ルールやら便利表が揃ったところで、他にDMが用意しておくと便利そうなものをちょっとだけ紹介しておこう。
例えばダイスだ。
はじめの一歩3.5 一歩目で述べたように、プレイヤーは一そろいのダイスがあればまあさほど問題なくプレイが進められる。
しかし、DMとなるとそうはいかない。いや、もちろん一そろいのダイスでプレイする事が不可能なわけではないが、しかしよく考えて欲しい。NPCを5人戦闘に参加させたと思いたまえ。んで、彼らの戦闘を解決するために、君はいったい何回ダイスを降らないといけないと思う?例えば彼らが6レベルのHFOの集団だったとして、PCの面々と接触したとする。そうすると1Rに2回攻撃できる彼らの命中判定を行うために少なくとも12回、そしてそれらが当たるたびに武器のダメージダイスを振らなければならない。
それだけじゃない。PC側から範囲呪文が飛んだら、下手すると全員分のセーヴロールを行わなければならなくなるし、他にもイニシアチブや各種スキルのチェック、チャームされて味方を殴るときの命判ダイスとダメージダイス、そしてファイヤーボールでHPが0以下になったあと安定化するまでえんえん%ダイスを振りつづけることになるのだ。
HFOでさえこうなのだ。もしここにウィザードのやローグ一人でも入っていたらと思うと恐ろしい。彼らはファイヤーボールを打ち、急所攻撃でダメージダイスをごっそりふることになるのだから。
では、どんなダイスを選ぶと良いのだろうか?
1)見やすいダイスを選ぶ
近年、いろんな材質のいろんなダイスが販売されるようになってきたが、それに伴って「こりゃ使えねえや」ってダイスも増えてきた。例えば硬質のクリアな材質で出来たダイス(いわゆる「クリスタルダイス」)は一見キレイだが、その手のダイスの一部は文字が浅堀りされているだけで文字が非常に読みにくい(ダイス目をごまかしたい時には非常に便利だという人もいるかも知れないが)。やはり、昔ながらの「薄い地に濃い色の文字」のダイス(逆でも可)が見やすいように思う。また、クリスタルダイスでも文字の部分にしっかりペンキが流し込まれているものは見やすい。まあ、現物を見て見やすいものを選ぶのがいいだろう。
2)材質を考える
1)でも述べたように、近年クリスタルや金属、木など様々な材質のダイスが販売されているが、どうも使いにくいものが多い。例えばクリスタルダイスの一部はそのクリアさを際だたせようとでもいうのか、カドを研磨しない状態で販売されているしかしこのタイプのダイスはテーブルから硬い床に落としたときにバリバリ欠けてしまう。また、金属性のものは重いためかやや転がりにくい(DM的にはダメなプレイヤーへの制裁用品として使えるので便利だというものもいるが)し、木製のは湿気や乾燥に弱く、ダイス袋に入れといたら割れてた、なんて話もある。結局のところ、昔ながらのプラスチック製で、カドがちゃんと丸められているものを選ぶのがいいだろう。
3)色の組み合わせを考える
実際DM業に従事してみると、何件かのチェックを同時に行う必要が生じる場合もある。例えば1Rに3回攻撃できるクリーチャーが敵として出てきた場合、3回順にダイスを振ってもいいが、これを一回で処理できると存外時間と手間の節約になったりする。そこで、複数個のダイスを購入する場合は、4面体〜20面体までの1セットを同じ色のもので揃えるようにしてみよう。例えば1セット目は白地に黒文字のダイスセット、2セット目は赤地に白文字のセット・・・などといった具合に。こうしておけば、3回の攻撃を同時に処理したい場合、命判のロールとダメージロールを一度に(ダメージダイスが1個なら計6個を同時に)振ることが出来る。当たった20面体ダイスの色と同じ色のダメージダイスでダメージを決定すればいいのだから。
ちなみに、この「色」も自分で「色順位」を付けて、プレイヤーたちに宣言しておくといい。薄い色→濃い色の順で処理、とか。こうしておくとどのダイスがどの攻撃に当たるかで迷わなくて済む(とくにNPCが複数回攻撃を行うようなとき、どのダイスにどれだけの攻撃ボーナスが与えられるか等の判定の際に迷わずに済むので便利なのだ)。また、d100を行う際にも「どっちが10のケタか」でもめずに済むようになる。
とはいえ、何個くらいのダイスを持って歩くべきかは荷物のキャパシティと懐具合によって変わってくるだろう。
しかしDMはいくつダイスを持っていてもそう邪魔になることはない。たとえダイスとして使わなくてもザコ敵がいっぱい出てきたときに駒代わりに使う(とくに20面体だと受けたダメージと同じ目を上にしてダメージ記録の手間を省けるから便利)とかできるので便利である。
またたくさんダイスがあれば心おきなく敵やトラップ、呪文をいっぱい出すこともできるし、プレイヤーの中にはダイスを忘れてくる奴だっているだろう。そういうヤツらに抜け目無く恩を売っておき、いざというときの布石としておくのも大事なDMの仕事というものさ。
ちなみに必要度の優先順位としては
D6>D20>D10>D8>それ以外
というところだろうか。特にd6は急所攻撃や呪文で頻繁に、しかも大量に振る事が多いので、少し多めにもっておいても良いだろう。まあ、D6は(たぶん)一番安くて種類の豊富なダイスだし、運がよければ百円均一で5-6個セットになったやつが購入できるかもしれない。余裕があったら少し多めに持っとけ!!
ザコ敵の話が出てきたので、次はコマの話でも。
これもはじめの一歩3.5 一歩目で述べたが、ゲーム用としてはD&Dをベースにしたミニチュアゲーム「DDM」が便利っぺえ。一方プラスチックのコマはモールドが甘かったり軽くてすぐ倒れたりと微妙なショボさがあるものの、一個あたりの値段が安く、材質故に壊れにくい上、彩色済み販売されているため非常に手軽である。デキは出色のものである、とは口が裂けてもいえないものの、雰囲気のあるものも多く、ひまなときには別ゲームとして遊ぶことも考えればそう高い買い物でもないだろう。
とはいえ、ムリしてこうした専用のコマを揃える必要もない。最近流行りの食玩(チョコエッグとかジュースのボトルキャップとか)を適当に使ってもいいし、種類の違う硬貨だってザコのマーカーとしては十分だ。また、安価にいろんな種類のコマを、ということであれば100円均一などでミニボードゲームを買ってくるのもいい。特にチェスのコマは白黒2色でコマの種類も多彩なため非常に使いやすい。ボスは黒のキングでザコは白のポーンなど、ぱっと見でも判別しやすいのもいいカンジだ。
D&Dをプレイするにあたり、実はもう一つ欲しいボードがある。それは「イニシアチブ管理ボード」である。イニシアチブは戦闘の度変わるし、待機や仕切直しで結構頻繁に変化するので、紙にいちいち書いて管理するのが結構大変なのだ。
そこでRAINBOWでは100円均一で購入したメモ用ホワイトボードにマジックで直接ワクを書き、-10〜30までの数字を書き込んで、そこにPCや敵の名前を書いたマグネット(やっぱり100円均一で購入)を貼り付け使用している。これだと早い順にマグネットの名前を読み上げて行くだけで済むし、イニシアチブ順位の変更も容易なのでオススメである。
いろいろ思いつくままに書いてみたが、これらはもちろん全部無ければならないというものではない。
最初に述べたように、DMという仕事はプレイヤーと比べ、少々投資額が大きくなる傾向がある。なので、多少この手の便利グッズの購入を控えたり、何もかもオフィシャルのもので揃えようとせず、代用できるものは安いもので代用してしまうのがいいと思うんだな。
あと、もし君が特定のゲームグループ(サークルとか)で遊んでいるようなら、いつも一緒に遊んでいるプレイヤーに知恵か金のいずれか(出来れば両方)を出して貰えるよう話してみるのもいいと思う。DMというのは世話係という一面を持っているが、だからって君が一人で負担をひっかぶる必要はないのだ。
さて、どうにか準備は整ったようだ。
早速プレイに移ろうじゃないか!
というわけで以下次号!
Have a Nice Game!!
Bang!Bang!
【金網から意味もなく実況席にダイブしながら】